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ちょっと古い話です。平成4年の夏だったかな。 香港は3度目とはいえ、居るだけで楽しい街なので、おおいに満足だった。同行の者が香港は初めてだったので、まあ気楽な旅にしようとツアーにした。往復の航空券とホテルと市内観光1日がセットになった、4泊5日のツアーである。 飛行機は往復とも、初めて乗るノースウエスト航空だ。噂には聞いてたけど、最悪だった。機種はボーイング747の古いもの、イヤホンは空気伝導型の聴診器タイプ。アペリティフのサービスは無いし、夕食のステーキはこれまで食べた事がないほどまずかった。 ホテルは、今まで行った中で最高級だった。なんせ前の2回の旅は、重慶飯店(そう、あのバックパッカー御用達の怪しい宿群)か同等クラスだったから。しかし、せっかくラマダ・ルネッサンス・ホテルという高級ホテルに泊まりながら、どうしてもDSTツアーのバックパッカーのノリを忘れられず、冷蔵庫に備え付けの飲物は畏れ多くて飲めず、ついセブンイレブンへフルーツ豆乳を買いに行ってしまうのだ。ましてや、最上階のプールやスカッシュコートなどの施設は他人ごとのように思えてしまう。もっと堂々とホテル・サービスを利用したいものだ。
まずは市内観光から香港の「市内観光ツアー」は、ほとんどが現地の旅行社に委託されている。連れて行かれる観光地は、タイガーバームガーデン、レパルスベイ、ビクトリアピークの三カ所だけで、ものの2・3時間で巡り終わる。以後の時間は、ひたすらお土産や旅行会社とグルのおみやげ屋をめぐる。それ以外の観光地は、すべてオプショナルツアーである。こうした観光を嫌って、ワンデイツアーをキャンセルしようとすると、なんと逆に全体のツアー料金が高くなる事もあるという。この辺に、複雑な香港旅行ツアーの謎が秘められている。そして、現地のガイドまでが突然バスの中で行商人に変身してしまう。「チップのつもりで買って下さい」などと言う。気の優しい日本人は、ウーロン茶、化粧品などを買ってしまう。ショッピングに連れて行かれるお店には、いろいろなツアーの日本人が次々となだれ込んでくる。こうしたお店は日本語も通じるし、日本円を使うこともできから便利な事は確かだ。しかし、ブランド品を買うならば、正規のブティックのほうが品数も豊富で安い事が多い。せっかく香港へ来たのなら、買い物だけは自由時間にする方がいいと思う。
香港によくある風景今回の旅行は、観光やショッピングはほとんどせずに、街をブラついて過ごした。香港という場所は、方位学や風水学の見地から、世界でも有数の好エネルギースポットとなっているので、シャワーを浴びる感覚で、街の鋭気を吸収し、心身をリフレッシュする事が、今回の旅行の唯一の目的だったから、なるべく一般の観光旅行で執り行われる活動はせず、ダラダラと過ごした。繁華街の日本人の良く通る交差点では、背の低いオバちゃんが、買い物袋の中から、にせのブランド品のベルトをつかみ出し、日本語で売り込んでくる。このオバちゃん、ツアコンの中でも有名で、なんと30年間ここでこの商売をしている。しかも、これでもオバちゃんは社長なのだ。自宅にはベンツもあるというから驚きだ。少し離れた場所では、オバちゃんの風貌を明らかに受け継いだと見える小太りの2代目が、パンダの図柄入りの小物入れなどをたわわにぶらさげて、仕事に励んでいる。 香港には、この手の従業員1名の会社社長が実に多い。ここでは大学に進んで一流企業に入社するよりも、こんな小さな商売から始めていつか財をなすことのほうがサクセスストーリーなのだ。てさげバッグのなかに扇子をつめこみ、ひたすら観光客に売り込んでくるおっさん、偽物時計の写真を束ねて寄ってくる兄さん、「これで商売になるのか?」というものばかりだ。彼らはなぜか日本人を見抜くのがうまくて、こうした連中に声をかけられなくなるほど現地人にとけ込むには、1週間くらいかかるだろう。 歩道の階段には、空中に説法を施しているおっさんがいた。ビルの入り口には、しゃがみこんでじっとしている意味不明オヤジ、なぜかガードマンはターバンを巻いたインド人、ビジネス街のビルの日陰には、お弁当を広げてピクニックをしている家族連れ、みんな街になじんでいる。国籍不明の異国情緒と雑然とした雰囲気をかもしだしている。 香港はいろいろな顔をもっている。九龍半島を北上すれば、のどかな中国の農村風景を味わえる。香港島セントラルは高いビルが並ぶブリティッシュなビジネス街で、ロールスロイスやベンツがたくさん目につく。香港総督府の建物は日本式だし、旧日本軍の軍票がおみやげに売られている。沢山ある島に渡ればリゾートホテルがある。まさに、いろんな楽しみ方のできるのは香港ならではである。 しかし、何と言っても名物は、夜景だ。今回は行かなかったけど、ビクトリアピークからの夜景と、チムサーチョイ・プロムナードからの香港島の夜景は本当に美しい。チムサーチョイ・プロムナードは、香港の山下公園といわれるほど、アベックが多い。大胆にいちゃついている。たしかにここは、とってもロマンチックな場所である。香港島のピークから見下ろす夜景もいいが、ここから対岸に見える夜景もとてもきれいだ。
思い出ばなし旅行2日目の夜、同じツアーに参加していた女の子2人連れを、女人街という露店街に案内する事となった。夕食の北京料理を食べながら話をすると、二人とも一つ年下の女医さんであると判明した。一人は整形外科、一人は脳外科であった。“香港で女医さんと知り合う”、これって、ウイリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズの名画「慕情」の設定だ。こりゃエエ思い出になるわいと、今宵はとことんつきあうことにした。女人街は、その名のとおり、婦人服やアクセサリー、パンティーやブラジャーなどといった女ものばかりを扱った露店が2キロくらい続いた場所である。男としてはヒマでヒマで、おまけに女の買い物はダラダラと長くて、本当に疲れた。結局、脳外科のほうがエルメスの偽物の時計、整形外科の方はよくわからないアクセサリーを買った。 整形外科の方は、なんとなくお嬢様風で、好みのタイプだったけど、こちらの内気でSHYな性格が災いして、電話番号もきけずに終わってしまった。でも、勤めている病院は教えてもらったので、今度足でも折って診てもらいに行こう。
現地人と過ごした旅行4日目に、同じツアー仲間と、ジャッキー・チェンが経営しているブティックに買い物に行った。店では何も買わなかったけど、そこの店員で、日本語の少し話せる香港人の女の子2人と仲良くなった。そして、その日の夜に待ち合わせて、彼女達の案内で夜の繁華街へ繰り出すこととなった。夕食は彼女たちが、美味しい韓国料理屋へ案内してくれるというので連れてってもらった。行ってみてびっくり、その店は4年前に香港に来たときに寄ったお店だった。おまけに、着いたテーブルまで同じで、これまたびっくり。でも旨い店だったので満足だった。不思議だったのは、その香港ギャル2人はなぜかビールを飲まず、2人ともコーラをストローで飲んでいた。焼き肉のときはコーラがいいそうだ。不思議だ。 焼き肉をたらふく食べた後、カラオケに行く事になった。香港でもカラオケは大流行で、いたるところにカラオケルームがある。店の感じは日本と大体同じだが、驚いたのは、広東語、北京語はもちろん、日本語、英語、フランス語など、10ヶ国くらいの歌が歌えるのだ。流石に国際都市だけある。 僕は「SAY YES」「サイレント・イブ」「愛は勝つ」など、香港ギャルの喜びそうな歌を本場の日本語で披露した。非常に好評であった。日本の歌は驚くほど人気があって、香港ギャルは、日本の歌が大好きだそうで、明菜や聖子からプリプリ、中島みゆきなどを流暢な日本語で上手に歌ってみせた。結局3時間ばかり歌いまくって、のどはガラガラ、時間も遅いので、帰る事になった。 この香港ギャルは2人とも、とっても可愛いかった。清楚で理知的で優しい感じだ。実は、夕食の韓国料理もカラオケも、全部この香港ギャル2人がおごってくれたのだ。それに、帰りはホテルまで送ってくれて、別れ際に、おみやげまで用意してきてくれていた。本当に感激した。香港滞在最後の夜の、最高の思い出になった。
うまいものまずは香港での食事を一覧にしましょう。
第1位 「粥」というわけで、もう5年も前の話になるが、あまり内容は手を着けずに済んだ。中国に返還されても、街の様子はそう急激に変わらないだろう。機会があったらまた訪れたいものだ。 |
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